名古屋市立大学病院(名古屋市瑞穂区)で、医薬用外劇物である10%中性緩衝ホルマリン液5mlが1本紛失したという事案が、2026年4月9日に病院から公式発表されました。 このホルマリン液は、内視鏡検査で摘出した腫瘍(ポリープなど)の病理組織を固定し、標本を作成するための防腐剤として使用されるものです。口にすると吐き気やめまいを引き起こす可能性があるため、劇物に指定されています。 事案の詳細(病院公式発表より)
- 確認日時:2026年4月8日(水)午後5時5分
- 場所:病棟・中央診療棟2階 第2透視室内
- 紛失物:10%中性緩衝ホルマリン液 5ml入り1本(透明ケースに10本入りで保管されていたもの)
経過(時系列):
- 午後1時23分:看護師Xが検査用に鍵付き保管庫からホルマリン液を取り出し、透明ケース1箱(10本)+検体立て2台(計10本)の合計20本を確認し、管理台帳に記載。搬送用ワゴンに載せてナースステーションに置く。
- 午後3時30分頃:同看護師がワゴンを第2透視室へ搬入。
- 午後5時頃:看護師Yが検査を引き継ぎ、検体立てから4本を使用。
- 午後5時5分:看護師Yが透明ケースを確認したところ、10本あるはずが9本しかなく、管理台帳の残数と検体採取件数を照合して不足が判明。
- 直ちに室内(ワゴン、棚、床)を探索し、廃棄物も確認したが発見されず。同日勤務の看護師・医師にも確認したが、追加で持ち出した者はなし。
4月9日午前11時20分頃に千種保健センターへ連絡、11時40分頃に瑞穂警察署へ通報し、現場検証のうえ遺失届を提出しました。
通常の保管・管理方法
- 鍵付き保管庫で管理。
- 始業時・終業時、検査で持ち出す際・戻す際に、管理台帳へ「日付・時間・職員名・数量・残数」を必ず記載。
病院の対応とコメント病院は「毒物・劇物の保管管理を改めて徹底し、再発防止に努める」としています(クエリにある「管理を改めて徹底する」とはこの表現に該当)。相次ぐ紛失を重く受け止め、運用の見直しも含めて再発防止を図るとコメントしています。 過去の類似事例(同大学関連施設)この病院ではここ3年で3回目のホルマリン液紛失です。
- 2023年4月:同病院で5ml 1本紛失
- 2024年11月:名古屋市立大学医学部付属西部医療センター(北区)で8ml 2本紛失
いずれも鍵付き保管庫での台帳管理下で発生しており、病院側は管理体制の強化を繰り返し表明しています。 現時点で盗難の明確な証拠はなく、院内での紛失として扱われていますが、警察が調査中です。患者さんへの影響は報告されていません。
ホルマリンの毒性詳細について
ホルマリン(主に10%中性緩衝ホルマリン液)の毒性詳細について、信頼できる安全データシート(SDS)や公的機関の情報を基にまとめます。クエリの文脈(病院で紛失した5mlの10%ホルマリン液)では、**ホルムアルデヒド(formaldehyde)**を約3.7〜4%含む希釈液です。純粋なホルムアルデヒドガスや37%濃度のホルマリンより毒性は低減されますが、劇物指定物質として扱われます。
1. 急性毒性(短時間・高濃度暴露)
- 経口(飲み込んだ場合):有害(GHS区分4)。ラットLD50は約600〜800 mg/kg(ホルムアルデヒドとして)。人間では37%ホルマリン30ml前後で死亡例あり。症状:口・喉・胃の激しい腐食・炎症、吐き気・嘔吐、腹痛、出血、穿孔、代謝性アシドーシス、意識障害、腎不全、昏睡。希釈液(10%)でも不快感や胃痛を引き起こす可能性あり。5ml程度の少量では致命的リスクは低いですが、即時医療機関受診を要します。
- 経皮(皮膚接触):有毒(GHS区分3)。ウサギLD50約270 mg/kg。症状:刺激・発赤・痛み、腐食性損傷(高濃度時)、乾燥・ひび割れ。繰り返し接触で皮膚硬化や感覚低下。感作性あり(後述)。
- 吸入(蒸気・ミスト):生命に危険(GHS区分2、高濃度時)。ラットLC50(4時間)約480 ppm(ホルムアルデヒドガス)。低濃度(0.5〜2 ppm)で目・鼻・喉の刺激、3〜5 ppmで涙・不耐、10〜20 ppmで咳・息苦しさ・胸痛、25〜100 ppm以上で肺水腫・気管支炎・呼吸不全・死亡リスク。臭いの閾値は約1 ppm以下ですが、慣れると警告作用が弱まる。
- 眼接触:強い刺激・重篤な損傷(GHS区分2A)。症状:灼熱感・痛み・涙・視力障害、角膜損傷・失明の可能性。洗眼が遅れると後遺症が残りやすい。
予想される主な急性症状:鼻・喉の灼熱感、咳、息苦しさ、頭痛、吐き気、催涙、視力低下。遅発性:喘息様症状、肺水腫、排尿障害・血尿。
2. 感作性・アレルギー
- 皮膚感作性:区分1(または1A)。接触皮膚炎やじんましんを起こすおそれ。特に繰り返し暴露で感作され、以後微量でも反応。
- 呼吸器感作性:区分1。喘息や呼吸困難を誘発。日本産業衛生学会では気道感作性物質(第2群)や皮膚感作性物質(第1群)に分類。
3. 慢性・長期毒性(反復暴露)
- 呼吸器・中枢神経系への障害(GHS区分1)。鼻粘膜の炎症・扁平上皮化生、慢性気管支炎、頭痛・めまい・感覚異常。
- 皮膚:繰り返しで乾燥・硬化・接触皮膚炎。
- 許容濃度例:日本産業衛生学会0.1 ppm(管理濃度)、ACGIH TLV-TWA 0.1 ppmなど。低濃度でも長期暴露で刺激症状や適応(臭いを感じにくくなる)が生じやすい。
4. 発がん性・遺伝毒性
- 発がん性:IARC Group 1(ヒトに対して発がん性がある)。鼻咽頭がん、鼻腔がん、白血病(特に骨髄性)との関連が強い。動物実験では鼻腔腫瘍確認。GHS区分1A(発がんのおそれ)。職業暴露(例: 病理検査室)でリスク指摘あり。
- 生殖細胞変異原性:区分2(遺伝性疾患のおそれの疑い)。DNA損傷や変異誘発性あり。
- 生殖毒性:一部データで区分1B(胎児への影響のおそれ)指摘あり(メタノール成分の影響も)。動物で催奇形性や胎児体重減少報告。
5. その他の特徴・注意点
- 10%中性緩衝ホルマリン特有:病院で腫瘍固定に使う希釈液のため、蒸気発生は少ないが、容器開封時やこぼした際に蒸気・ミストが出る。メタノール(安定剤として数%)が含まれる場合、追加の毒性(視力障害・中枢神経影響)あり。
- 環境影響:水生生物に毒性(区分2〜3)。
- 劇物指定:毒物及び劇物取締法で「ホルムアルデヒドを1%超含有する製剤」は劇物。
暴露時の対応(一般的な目安)
- 吸入:新鮮な空気の場所へ移動、安静。症状あれば即医師。
- 皮膚:石鹸と多量の水で洗浄、汚染衣類除去。
- 眼:流水で15〜20分以上洗眼、コンタクトレンズ除去後継続。直ちに医師。
- 経口:口をすすぐ(吐かせない)。即時医療機関・毒物情報センター連絡。
- 常に保護具(手袋・ゴーグル・換気)使用、漏出時は専門対応。
名古屋市立大学病院の紛失事案のように5ml 1本は少量ですが、劇物として警察通報・管理徹底が求められます。


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